部屋と沈黙

本と生活の記録

香月泰男のシベリア・シリーズ


先週の日曜日、山口県立美術館で、香月泰男のシベリア・シリーズを観てきた。

シリーズ全57点が一度に公開されるのは8年ぶりなのだそう。早い時間だったからか混雑はなく、年齢層は高め。作品と一緒に、香月の言葉を引用した小さなパネルも展示されている。

香月の遺した言葉には、絵と同じくらいの価値があるように思う。自分を大きく見せたり、かといって小さく見せたりすることもなく、率直な実感だけが伝わってくる。

「囚」の字を模したように、黒い四角形のなかへ押し込められた顔。手のなかで小さく灯る日本地図。
轍を描いた絵具の厚みが髑髏のように見えた。画集だけでは分からなかったことだ。


お腹が空いたので、中市町のやどりぎ舎で早めのお昼ごはん。キーマカレーはドリンクとセットで1,050円。スパイスが効いていて美味しい。
同じ通りに原口珈琲も並んでいた。たしかネルドリップのコーヒーだったはず。

商店街のお土産もの屋さんで買い物。「旅先のご当地スーパー」がおもしろいとはよく聞くけれど、「地元のお土産もの屋さん」に入ってみるのもいい。新しい発見がある。

海のノート

香月泰男の海



香月泰男画文集 〈私の〉地球』から、海や水辺を連想させる作品を選んでみた。香月の代名詞といえばシベリア・シリーズだけど、個人的には、こういう1940〜50年代に描かれた作品が気になっている。
この夏、山口県立美術館ではシベリア・シリーズ全57点が一挙公開される。


三好銀の海


三好銀の海と町は、コンクリートの崖っぷちによって垂直に断ち切られる。異界としての海の異様さ。それ以上に異様な町、人。


市川春子の海


海と人、異界とのあわいをフェティッシュに描く市川春子。関係の交わりを表現するのが本当に上手い人だと思う。


直島の海

草間彌生のかぼちゃが鎮座する直島の砂浜で拾った貝殻、その他。2007年。チャック付きのビニール袋に入れてしまい込んでいたのを思い出した。


角島の海


山口県が誇る美しい海辺。その一方で、島の反対側の海岸沿いでは、大量の漂着ゴミが山をなしていた。2018年。角島のことを思うと、複雑な気持ちになる。


〈私の〉地球―香月泰男画文集

〈私の〉地球―香月泰男画文集

海辺へ行く道 夏 (BEAM COMIX)

海辺へ行く道 夏 (BEAM COMIX)

25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

今週のお題「海」

「ままならない」のなかに

今更ながら、手を動かして何かを作るのが好きかもしれない。

お正月、必要に迫られてぽち袋を作ったとき、ひたすら作り続けられそうな気分だった。大学で建築模型を作成していたときは、趣味にしてもいいと思った。さかのぼれば、コミック雑誌のふろくを組み立てるのが好きだった。ふろくに興味のない、きょうだいたちの分まで作った。

ちいさいころから本ばかり読んで、「なぜだろう」と考えたり、「今」を文章にして留めておきたいと思ったり、手でさわれないものばかりを大事にしてきたけれど、本当に好きなのは、手でさわれるものなのかもしれない。

たとえば、文章を書くのが好きだとは言い切れない。おもしろいけれどままならず、難しい。ブログをスイスイ更新していく人を、本当にすごいと思う。羨ましくも思う。

あるいは、運動なんて苦手だと敬遠していたのに、水泳を始めてから身体を動かすことが好きだと気づいた。たぶん、ボールとかラケットとか、道具を使うスポーツが苦手なんだろう。

ままならないおもしろさに夢中になって、「好き」が見えにくくなっていたのかもしれない。ままならないから苦手だと思っていたことにも、「好き」は見つけられるかもしれない。

それなら、なんでもやってみようと思う。大人になったおかげで、「やって後悔」することがほとんどなくなった。むしろ「やらなくて後悔」する。掃除だって、やるまでは面倒だけど「やって後悔」することはない。あれこれ考える前にやってみるべきだ。わくわくする気持ちを大事にして。