部屋と沈黙

本と生活の記録

そういえば羽田圭介がいた

f:id:roomandsilence:20160430170140j:plain:right母が図書館で借りてきた本のなかに、羽田圭介の『黒冷水』があった。『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞し、「又吉じゃない方」としてメディアに登場した男。普段の読書傾向から考えると手に取りそうもない作品なのに、そこはミーハーでテレビっ子の母。ひんしゅくを買うこともあるという彼のテレビ出演が、新しい読者を生んだのだ。正確には「金にならない読者」だけれど。

羽田圭介のデビュー作『黒冷水』は、兄弟間の家庭内ストーキングをめぐる物語。結末のひっくり返し方なんかはありがちかなと思ったものの、弟への憎しみを再認識し、自らの内の〈黒冷水〉を自覚するあたりはとてもよかった。憎しみは怒りと違って、己を侵食するほどに“冷たい”。どちらかといえば〈もの語り〉よりも感情や衝動を描写するのが上手い作家なのかもしれない。

知るほどに気になる、妙な人だ。ウィキを口語訳したような羽田圭介まとめサイトをまとめると、おそらく彼は筋の通った変人である。支離滅裂な変人は狂人ゆえ恐怖でしかないが、筋を通してくる変人の強烈さはちょっと他にないほど興味深い。だからメディアが放っておかないし、読者ではないファンがつく。あと、顔がおもしろい。

短い旅行〈京都編〉

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お昼前に京都へ到着し、そのまま岡崎のカフェ〈メメントモリ〉へ。〈今日のごはんプレート〉をいただく。メインは鶏つくねのハンバーグ。ボリュームたっぷり、野菜そのものが美味しいから、なお美味しい。疏水沿いの桜は満開。眺めながらゆっくり食べる。

食後にはホットコーヒーを。香ばしくておもしろい、今までに飲んだことのない味。穀物系と言っていいものか……?きなこのボタンクッキーはサクサクほろほろ。おなかが落ち着くまで、文庫本を読んで過ごす。

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メメント・モリ」らしく(?)、祭壇のようなインテリア。
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近くには図書館、美術館、平安神宮ほか、リニューアルオープンした〈ロームシアター京都〉も。テナントの蔦屋書店は何かの間違いかと思うくらいに狭く、2階には小洒落たレストランが、3階には忘れられた図書室みたいにひんやりとした閲覧スペースがあった。

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河原町をぶらつき、小さい買い物を少ししたあと、〈六曜社地下店〉へ。ブレンドコーヒーとドーナツを注文する。ブラックでもすっと飲める、ちょうどいいコーヒーと、素朴な味の温かいドーナツは、最上級の“普通”さ。ハウスブレンドの豆を100g買う。

多和田葉子の朗読イベントへ。私が敬愛する作家は概ね死んでいるから、生きていて、会えるのならば、それは本当に素晴らしい。わずかな低音が底に響く声で、写真でしか見たことのなかった人が本当にいた。四六版の『雪の練習生』にサインをしていただく。いい歳なのに女学生みたいにどきどきして、一言一句息継ぎしながら、どうにかご挨拶できた。


f:id:roomandsilence:20160411201931g:plain:right夜、電車で大阪のホテルへ移動し、翌日は伊丹市立美術館へ。〈エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展〉を見学する。修正のあとがほとんどない緻密で不吉な原画は、銅版画かと見紛うほど。なんでも『不幸な子供』は、ゴーリー自身、壁紙を描き込むのが嫌になって、5年ほどほったらかしにされていたらしい。台湾では高い栗で〈高栗〉。ミュージアムショップではポストカード2枚と、公式図録よりおもしろそうだったMOEの特別編集号を買う。


梅田に戻るため、もう一度「あの」福知山線に乗る。行きも帰りも、大きいカーブでは少し緊張した。日常的にこの沿線を使う人々にとって、毎日はもう「日常」だろうか。それとも。


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お昼ごはんは〈ホワイトバードコーヒースタンド〉で。ナスのアラビアータはご家庭の味、コーヒーもやや酸味があって舌に残る。家族へのお土産は〈千寿せんべい〉を。それから、新大阪駅構内のパン屋〈パンデュース〉のパンが思いのほか美味しかったことも記す。

短い旅行〈静岡編〉

先々週の静岡に続き、先週は京都へ行ってきた。
もう、しばらく旅行はいい。私は家でじっ……としていたい。

1.
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お昼すぎ、静岡駅に到着。ホテルのフロントに荷物を預け、〈ジェミニーズ〉で遅いランチをいただく。パストラミビーフがたっぷりはさまれたサンドイッチは、見た目も華やか。半分でも充分なほどのボリュームで、付け合わせのフライドポテトは不思議と甘く、美味しい。おなかがこなれるまでコーヒーを飲みつつ、お店に置いてあったガイドブックで情報収集をする。

15時チェックイン。駅でもらった地図に行ってみたいお店の情報を書き込んでいたら、あっというまに1時間近くたっていて、慌てて外出。鷹匠と呼ばれるエリアを歩いてまわる。〈ル シャン ボラン〉でメロンパンとゴマのパンを、〈チャガマ〉でお茶っぱを買う。他にも行ってみたい洋菓子店やカフェがたくさんあったけれど、時間的にもおなか的にも難しく、断念する。

晩ごはんは〈スープストックトーキョー〉の〈桜海老と春キャベツのクリームスープ〉をテイクアウトし、軽くすませる。スープ表面の油の浮き具合が気になったものの、味は普通。具はあってないようなものだった。

2.
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結婚パーティー当日。会場の最寄り駅まで電車で50分くらい、がたごと揺られて行く。晴れて、心配していた寒波もそれほど気にならない。こうやって学生時代の友人と顔をつき合わせていると、少しずつ歳を取っているのが分かる。いちばん最初に出会ったのは、なんといっても18歳だったんだから。日帰りする友人らと別れ、ホテルへ帰宅。そのままゆっくりとお風呂に入り、ハンズで買っておいた泡風呂用の入浴剤をここぞとばかりに愉しむ。

3.
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最終日は日本平動物園へ。向かうバスの中で、一瞬見えた大きい山が富士山だったのだろうか。市街地では背の高いビルが邪魔をして、日本でいちばん大きな山がすぐそばにあるとは、とても想像できない。天気の良い日曜日、お一人様のアウェー感を懸念したものの、みんなが動物を見ているので全く気にならない。上下左右、全方位から見学できる。金網越しの、触れられるほどの近さに猛獣たちが寝そべっていて、それがなんだか不思議だった。

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お土産屋さんで買った動物パン。

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静岡駅に戻り、フリーペーパーに載っていた〈アレイ レストラン〉でランチをいただく。〈用宗産しらすと春キャベツのアラビアータ〉をセットで。これにサラダとドリンクが付く。「フリーペーパーを見た」と言って付けていただいた特典のプチデザートが全然プチじゃなく、立派なチーズケーキで申し訳ないほど。美味しくて幸せ。

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静岡市美術館でちょうど最終日だった〈スター・ウォーズ展〉は、ミュージアムショップだけをのぞく。「にわか」にすらなれないほどの貧弱な知識にもかかわらず、イラストがかっこいいクッキー缶と、マスター・ヨーダのピンズを買ってしまった……。ちなみに、クッキーには帝国軍と反乱軍のシンボルマークがプリントされている。ブームが落ち着いたら、あらためて観てみるのもいいかもしれない。