部屋と沈黙

本と生活の記録

1ヶ月

新しい職場に勤務し始めてから1ヶ月。仕事には少しずつ慣れてきた。所員7名の小さな事務所だけど、適度な距離感があって人間関係も悪くない。ひと月前に注文していた車も先日納車されたから、暑いなかの自転車通勤もなくなる。あとはスマートフォンを買って、一人暮らしを始められたらいい。
とりあえず今日はもう、妹の家まで往復2時間のドライブと、甥っ子の相手でへとへとです。

厄年様様

「散々」な大厄と、12年に一度の「幸運期」が一緒くたにやってくるらしい私の2016年は、どうやら本当に一筋縄ではいかない。

ついこのあいだ、ようやく正社員として働けるくちを見つけたことがひとつ。こちらに戻ってからの2年半は、ずっと非正規で働いてきた。というより、これまでもだいたいにおいて呑気な非正規だったのだ、私は。採用通知に「事務所に置いておくコップを持ってきてね」みたいなことが書かれているだけでうれしい。試用期間を終えたらまた一人暮らしをしたいし、車も買おう。

そんな私の2016年は、転職、転居、大きな買い物を避けるべき厄年でもある。語呂合わせで「散々」とも言われる強烈な大厄らしいんだけど、なんとなく大丈夫な気がしてお祓いへは行っていない。毎年、インフルエンザには罹らない気がするから予防接種を受けないし、実際罹らない、そんな感じで。

そもそも厄年の「○○すべきではない」という考え方が気に入らないのだ。あれもダメこれもダメ、そうやって最初から分かっているなら、どうすべきなのかをまず考えろやと思う。だから私は「厄年には長いものを身につけると良い」というアレにあやかり、腕時計を新調することにしたよ。やったね!厄年様様である。
今週のお題「2016上半期」

愛すべきオカンムービー『海よりもまだ深く』

f:id:roomandsilence:20160525220426j:plain:right是枝裕和監督作品
軍手で作ったお人形やレース編みのドアノブカバーを愛すべきオカンアートと呼ぶならば、本作は愛すべきオカンムービーである。カルピスをコップに凍らせて超テキトーなアイスにしたり、インスタントコーヒーの中蓋をはがさずに少しだけ穴をあけてそそいでみたり、なんか風呂が汚かったり、賞味期限がいつなのかよう分からんものを食べさせようとしたり。私の場合はオカンというより、母方の祖母を思い出した。うちの祖母の家にも、通販で買った多機能ラジオみたいな謎の便利グッズがたくさんある。そうやって、「なんなんよ、もー!」とか「なにこれー!」とか言いながら、ふとしたときに思いだして、ほんの少しだけ泣きたくなるような、胸がしめつけられるような気分におそわれるのだ。あれは一体何なんだろう?懐かしさとも少しちがう。もしかしたらそこに、海よりも深い何かがあるのかもしれない。



良多(阿部寛)と淑子(樹木希林)のかけあいに思わず笑ってしまうこともしばしば。日常のとらえ方が本当にうまい。それこそ、クラシックの会での分譲組と賃貸組の席順とか、そこの先生の家にいる訳ありそうな娘さんとか。直接は語られなくても、思い通りにならない人生がいたるところにある。

ままならないままに生きていくしかないときもあるからこその、あのラストだろう。良多はこれからもギャンブルに手を出すだろうし、いくつになっても頼りなさそうだけど、あのときに手放さないと決断したことが、きっと何かを変えていくはずだ。