部屋と沈黙

本と生活の記録

これから毎週金曜日は、

これから毎週金曜日は、図書館へ寄って帰ることにした。ものごころつく前から本が好きなのに、最近はほとんど読んでいない。だから「本を読むこと」を習慣にするんじゃなくて「図書館へ行くこと」を習慣にしようと思う。どんなにおもしろそうな本があっても…

恐怖について / ホラーと小説の相性

Twitterの読書界隈が「ホラー小説」で盛り上がっており、なんだろうと見に行ってみると「ホラーと小説は相性が悪くて悲しい」という内容のツイートが話題に上っていた。個人的には、ホラーこそ小説との相性が良いと思う。しかし、彼(あるいは彼女)によると…

#絶対に読んどけっていうSF小説を読んでみた

タイムラインに流れてきた必読のSF小説トップ10にレムの『ソラリス』とオーウェルの『1984年』が入っていないのを見て「やりなおし!」と思うのは楽しい。本好きにはそれぞれ「ぼくのかんがえたさいきょうの〇〇ランキング」があり、大抵はやりなおしを命じ…

考察と妄言

村上春樹の長編小説『街とその不確かな壁』が4/13に発売される。自分では「それほど熱心な読者ではない」とか言いながら、やっぱり「おぉ〜!」と思う。長編だとなおさら。読書を趣味にしている人はたぶん、多かれ少なかれ村上春樹に対するなんらかの感情、…

市川春子『宝石の国』12巻までを読んでの感想

普段は、完結前の漫画の感想は書かないようにしているんだけど*1、今回は書く。市川春子『宝石の国』12巻、約2年4ヶ月ぶりの新刊である。写真は特装版。ちなみに私は単行本派で、アニメは観ていない。彼らの世界の痛みは消えていない。痛みが移動しただけ。…

そのかなしみの根をとおして / リチャード・ブローティガン『ハンバーガー殺人事件』

要するにブローティガンは“So the Wind Won't Blow It All Away”を『ハンバーガー殺人事件』と訳されるタイプの作家だったのだ。そういうタイプの作家だと“思われていた”。憂鬱や喪失を、たとえば西瓜糖の言葉で表すような人なのだ、と。『ハンバーガー殺人…

忘れられない女の子 / アストリッド=リンドグレーン『長くつしたのピッピ』

実家へ行ったついでに、本棚からリンドグレーンの『長くつ下のピッピ』を抜き出す。私が読んでいたのは講談社の青い鳥文庫版。まえがきによると、シリーズ3作品からリンドグレーン自身が選んだベスト版の全訳らしい。子どものころはとにかくたくさん読みたか…

浅ましい魂の食べ物

お盆休み2日目。「浅ましい魂」が韻を踏んでいると気づいたことくらいしか書くことがない。今朝、布団のなかで半分寝ながら読んでいた本のなかの「なんて浅ましい」から思いついた。ああ、なんて、なんて浅ましい魂!語尾の「い」だけじゃなく、母音も揃って…

Q

読み終えてみれば児童文学だった。午前3時。きのうは早寝をし、昼寝もたっぷりしたから、それほど眠くはない。あとがきによると、イギリスの児童文学賞を受賞しているらしい。しかし、いまひとつぴんとこない。思い返せばサン=テグジュペリの『星の王子さま…

たとえば、

パジャマを買った。10年くらい前に買ったユニクロのパジャマを着て寝ると、なんだかすごく汗をかく、ということに10年越しで気がついたのだ。原因はおそらくフリースだろう。ズボンは綿100%だから、同じ綿100%の長袖シャツを買って、上だけ入れ替えること…

TikTokと書評にまつわる読書界隈の炎上について

斜陽の読書界隈が炎上している。Twitterからおすすめされる〈本〉のトピックをスクロールしつつ、なんだかやたら「書評」と「TikTok」で盛り上がってるな〜と思ったら、ある書評家のツイートが炎上していた。いわく、書評家の「TikTokなんかで本を紹介するの…

ひとりで過ごす

これを、こうして、こうだ!可愛い〜!!!100円ショップで見つけたポチャッコのチャームバンド。すごく可愛いけれど、ゴム素材をブレスレットにするのはちょっとチープだし、このままヘアゴムにするのも女児すぎる。というわけでパーツを付け足し、ヘアゴム…

郊外のものたち / リチャード・ブローティガン『ソンブレロ落下す ある日本小説』

ほとんど気がふれてんのかな、と思う。天才的で痛々しい。皮膚を破って流れる血の気配がする。死の匂い。リチャード・ブローティガンの小説は概ねそんな感じ。そういう痛々しい物語は苦手なはずなのに、ブローティガンは私にとって特別な作家の一人だ。血の…

身のうちに他者を湛えて / スタニスワフ・レム『ソラリス』

きっかけは「ハヤカワ文庫の100冊」フェアだった。スタニスワフ・レム生誕100周年記念の限定カバーが平積みされ、ホログラム仕様が光を反射していた。“思考する海”。アンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』や、Amazonのほしいものリストなかに、レム…

道草を食う本棚

▶︎ https://yama.minato-yamaguchi.co.jp/e-yama/articles/34796県内の書店が出版社を考慮しない「あいうえお順」で文庫本を陳列しているという。私はこの「出版社ごちゃ混ぜあいうえお順」がどうしても好きになれない。私はかつてチェーン系の書店に3年、イ…

愛のような

「なんか良いですね!良い感じじゃないですか!」 「休みの日に見てたYouTuberに影響されてーー」連休明け、なんとなく垢抜けた上司がライフハック系のYouTuberにどっぷり感化されていて笑う。なんでも、そのYouTuberが紹介するガジェットやら洋服やらがすご…

その名を呼ぶ者 / メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』

浅い眠りの痕跡がまぶたに張りついている。朝。翻訳家の柴田先生*1が『フランケンシュタイン』の人称代名詞についてツイートされているのを見て、そういえばうちにもあった気がすると引っ張り出し、遅くまで読み耽っていたのだ。 私が持っているのは山本政喜…

いつかの冗談の旅のために

スマートフォンのホーム画面に設定したカレンダーのウィジェットで、今日が「山の日」であることを知る。たしかいつかの「海の日」に、海にまつわる本とあれこれについて書いたんだった。ならば「山の日」には、山の本とあれこれを書こう。読みさしの本の山…

『AKIRA』が今を覆い尽くす日

東京オリンピックが開幕した。いまだに賛否両論、問題山積である。でも、そんなことどうだってよくなるくらい気になってしまうのは、大友克洋が描いた『AKIRA』という物語の存在感だ。幻の開会式案として挙がっていたらしい『AKIRA』の赤いバイクが見られな…

プレーンラスクをつくってたべよう!

私が好きな料理の本を、作って食べて紹介する「つくってたべよう」。今回、紹介するのは……の前に、まずは私の料理にまつわるあれこれについて書いておこうと思う。美味しいものが好きだ。でも、料理はそんなに得意じゃない。込み入ったレシピなんて面倒だし…

過去が光って見えるのは

きのうは晩ごはんのあとにうっかり寝入ってしまい、目が覚めたのは深夜の12時過ぎだった。食器を洗い、シャワーを浴び、バニラアイスを食べてAmazonで買い物をし、プライム・ビデオのウォッチリストにいくつかのドラマ、アニメ、映画を追加して、うれしいよ…

村上春樹 x UT 購入編

オンラインストアで注文していた村上春樹のコラボTシャツが届いたので、最寄りのユニクロへ取りに行ってきた。 サイズはメンズのXS。やや肩が落ちているけれど、全然着られる感じで嬉しい。着丈も悪くないと思う。ポケットのワンポイントは刺繍だった。羊男…

村上春樹 x UT

村上春樹の小説とUTがコラボするらしい。趣味欄を「読書」で埋めてきた数多の人間の端くれとして、気にならないわけがない。何度でも言うが、私はなにしろ本が好きなので、持っているTシャツも本にまつわるものが多い。このラインナップだったら『ダンス・ダ…

瀕死くらいでやってみる

正確なきっかけは忘れてしまったけれど、19か20の頃に、今の言葉で書かれた現代短歌を読んでから、短歌のことがずっと好きだった。学校で習った文語体の短歌とは違って、こんなのも“あり”なのか、とびっくりしたのが始まりだった。その後、本屋さんで働いて…

一度愛したら、

最近の100円ショップには可愛いものがたくさんあるから、お買い物が楽しい。このあいだは、ダイソーにほわころくらぶの文房具が置いてあると知り、探しに行ってきた。マスキングテープの棚、ペンの棚、ラッピンググッズの棚を回って、マスキングテープ2つと…

“話してあげよう”

物語が必要だった。それなりにボリュームのあるファンタジーで、過去に一度読んだことがある物語でなくてはならなかった。“今ここ”から遠く離れた別の場所が必要だった。私は疲れきっていて、結末を知るすべもないのは“今ここ”だけで十分だった。去年の春に…

紙の束と石ころの山

オンライン紙博で配信された柴田元幸の朗読ライブを観る。柴田先生の「いま、これ訳してます」という作品が3つ朗読され、そのうちのひとつがシャーリイ・ジャクスンの『くじ』だった。江戸川乱歩が言うところの「奇妙な味」好きとしては、怖くてへんてこな小…

紙の束とピアノの音

オンライン紙博のライブラインナップに「曽我部恵一」の名前を見つけて、積読の山から『昨日・今日・明日』を引っ張り出してきた。ちくま文庫版の奥付は2009年11月10日。それよりももっと前(だったと思う)、ROCKIN'ON JAPANで連載されていたコラムが好きで…

≒ book

なにしろ本が好きなので、持っているTシャツも本にまつわるものが多い。ディック・ブルーナ、ヨゼフ・チャペック、トミー・ウンゲラー、バージニア・リー・バートン、長新太、せなけいこ、きくちちき。夏の私は、概ね絵本のなかの絵を着て暮らす。なお、とっ…

小さいけれど響く声

連休前に少しでも雑務を片付けておこうと残業申請をしたせいで、スティーヴン・ミルハウザー『ホーム・ラン』刊行記念イベントのYouTube配信を思い出したときにはもう、開始時刻を15分も過ぎていた。2時間前にざっと降った雨の名残りのなか、急いで自宅へ戻…