★★★☆☆
『マンスフィールド・パーク』まとめ
1. 読みにくいが、分かりやすい娯楽小説
2. 性格に難あり
3. 減点主義者の愛
1. 読みにくいが、分かりやすい娯楽小説
もってまわったような文章(訳文)がやや読みにくいが、ストーリーは単純で分かりやすい。貧しさゆえに虐げられてきた女の子〈ファニー〉が幸せな結婚をつかむまでのお話。目新しさはないものの、いざ読み始めると続きが気になってしょうがないんだから不思議だ。
2. 性格に難あり
たらしのヘンリーに放埓なトム、ラッシワースはまぬけだし、イエイツはKY。エドマンドは堅物だけど、まぁ彼らよりはマシだ。たらしのヘンリーがファニーに手を出しても、地の文が二行目でこれを否定する始末なので、安定の〈エドマンド〉ルートである。
そもそも、本作には性格に難のある人物が多すぎる。ファニーを口汚く罵る伯母さん、自己中心的な伯母さん、恋敵のメアリーはファニーよりもよっぽど魅力的なんだけど、愛もお金も手に入れたいがために破局してしまう。
ファニーはまるでドーナツの穴のように、魅力的でない部分を一身に引き受けた脇役たちの〈魅力〉によって、支えられている。
3. 減点主義者の愛
ラスト数ページでたたみかけるように結婚した〈お金よりも愛〉の人、ファニー・プライス。とはいえ貧乏暮らしかというとそうでもなく、愛も、それなりのお金も手に入れたのだった。
おもしろかったし、幸せなのは大いに結構なんだけど、なんだかしっくりこない。この結婚が、エドマンドの減点主義による成り行きだから?マイナスを重ねるメアリーと、特に記すことなしのファニー。あっメアリーよりこっちのほうがいいじゃん、てなもんである。えー。
『マンスフィールド・パーク』
ジェイン・オースティン/大島一彦訳 中公文庫
- 作者: ジェインオースティン,Jane Austen,大島一彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/11
- メディア: 文庫
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