部屋と沈黙

本と生活の記録

トーベ・ヤンソン展 ムーミンと生きる

初めての駅に降りて、こっちかなーと思っても大抵間違っている。北口じゃなくて南口、西口じゃなくて東口、みたいに。朝の小倉駅は曇り空で霧雨が降っている。

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北九州市立美術館分館のあと、大阪・あべのハルカス美術館へ巡回

電車に乗ってトーベ・ヤンソン展を観に行く。それがスケッチであれ習作であれ、原画の迫力にはいつも圧倒される。インクの厚み、紙を切り貼りしたあと、修正のあと。痕跡から、作家が本当に生き、作品に入り込んでいたことが分かる。こういうざらざらした生の手ざわりみたいな感覚は、画集だと消えてしまうように思う。自分の目でちゃんとさわらないと分からない。

たくさんの挿絵原画のなかに、表紙や絵本のための水彩画があって、色合いが目に気持ちいい。やさしいのにそれでいて華やかな印象を受ける色。好きだ。絵の中には物語がある。


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「さびしがりやのクニット」挿絵入り絵皿

グッズコーナーでは目当ての絵皿のほかに図録とポストカード、ついでにボトル入りビスケットを買ったせいで七千円を超えてしまった。グッズにななせんえん!なんてこった。大人になってよかった。


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ロータスバゲットのいちじくスコーンと、シロヤベーカリーのレーズンブレッド

充分楽しんだあとは駅前を見てまわる。シロヤベーカリーでバターパン、サニーパン、レーズンブレッドを買う。同じエプロンを着けた年若い女の子たち五、六人が暗算か電卓で対応してくれる。私は電卓の子だった。お金は年季の入った木箱に分けられる。安くておいしい、ごくふつうのパン。あとはお茶っぱを買ったり、使ってみたかったMARKS & WEBのトライアルセットを買ったり。


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帰りの電車の窓枠に〈おじいちゃん 大始き しなないでね〉という落書きがあった。すごく、すごく始まってる。2000年1月とあったけど、おじいちゃんは今も生きているだろうか。