部屋と沈黙

本と生活の記録

むきだしの問い

「ピースの又吉直樹さん、史上初の快挙です!」

アナウンサーのはずんだ声で又吉の受賞を知る。最近の芥川賞といえば、読んでもなんやようわからんかったり、横書きだったり、言い回しが独特だったりして、癖のある作品が多い気がしていたから、わりとまっとうな青春小説である『火花』が受賞するとは予想していなかった。へえ、と思いながらお弁当箱に玉子焼きをつめる。テレビでは太宰がどうの、と言っている。

芥川賞太宰治とくれば、川端康成へむけた「刺す」の抗議文だろう。手垢にまみれていない、シンプルで鮮やかな罵詈雑言である。思い出すたびに可笑しい。誠に申し訳ないことではあるが、真剣に怒っている人は時々おもしろい。

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ところで、このあいだの記事のおかげかアクセス解析に〈カノン進行のお経 とは?〉での検索履歴があって、なんだかとてもうれしい。意味を語るのは野暮でも、(マジで知りたい)と思うことは素敵だ。私なんかは「芸人同士だとこんな感じなんだろうなー」くらいのもので、あっさり通りすぎていたから。見るたび、読むたび、知るたびに慣れて、通りすぎてしまう。むきだしの問いは時々どうしようもなく美しい。