部屋と沈黙

本と生活の記録

『キングスマン:ゴールデン・サークル』を見たよ!

信号待ちで、前に停まったマツダ車のエンブレムを眺めながら「横棒を一本入れたらキングスマンだよースパイの車だよー」と思う。

仕事帰りに『キングスマン:ゴールデン・サークル』を観てきた。相変わらず悪趣味である。グロテスクなシーンはB級ブラック・コメディやギャグ漫画のように茶化されているものの、今作では本能的な禁忌に触れる表現があるから、苦手な人は本当に厭な思いをするかもしれない。
ともあれ、ジョークでありながら本気のアクションシークエンスで魅せる、新世代のスパイを描いた新時代のスパイ映画だ。ジャングルへ侵入するときもスーツで正装するちぐはぐさがキングスマンらしい。
ただ、前作が好きだからこそ、色々言いたくなることもある。

以下、ネタバレありの感想を記す。


パンフレットより

・ 新世代のスパイ
今作で何より驚いたのは、行きずりのお相手だと思われた前作のスウェーデン王女ときちんとお付き合いしていることだ。前作でJBを殺さなかったこと(そもそもJBと名付けたこと)も、今どきの、等身大の若者であるエグジータロン・エガートンの良さを表していると思う。堅物とプレイボーイしかいないスパイのイメージを覆す、良い意味で“普通っぽい”新世代のスパイだ。

・ 共感できるかできないか
共感できる悪役こそ良い悪役だと思う。
前作のヴァレンタインサミュエル・L・ジャクソンは環境問題に熱心で、ちょっと人間増えすぎだよね!(わかる)よし、殺そう!(えっ)みたいな、共感できる部分もあるのに、やり方が過剰でどこかズレているから悪役になってしまった。そのくせ血が苦手なところなんか可愛いし、そんなヴァレンタインを庇い慕う強くて美しいガゼルソフィア・ブテラもいい。
対して今作のポピージュリアン・ムーアの主張はほとんど私利私欲のためだ。母国に帰り、名声を得たい(ふーん)。
ジュリアン・ムーアの喋り方や表情が得体の知れない少女のようで良かっただけに、共感できない悪役として、サイコパスとして、徹底的に描いてほしかったなぁ。漫然と嘘をつき、他人の感情をコントロールしながら、裏切りの有無に関係なく不必要になれば殺す。人々が天才に惹きつけられるように、極端な精神病質者もまた強烈に人を惹きつけるのだから。

・ 泣き上戸
マーリンマーク・ストロングは呑むと泣くタイプ。

・ ハリー・ハート、スーパー・スパイ
自分自身を「スーパー・スパイ」と鼓舞するハリーコリン・ファースが可愛すぎ。

エルトン・ジョンはお友達
だそうです。

・善悪を分かつもの
今作はドラッグの是非というより、何を善しとし、何を悪しきとするかについて考えさせられたな。
たとえば「ドラッグをやらないから良い人間」と言い切れないことは、作中のアメリカ大統領の発言からも分かる。そして、ウィスキーペドロ・パスカルのように麻薬中毒者と人殺しを簡単にイコールで結んでしまうのも危険だ。
たとえば国、あるいは男女。何かを大きく捉え、そのすべてを安易に否定してしまうと、取り返しのつかない間違いを犯してしまうかもしれない。

・ 犬は生きている
JBを殺さない選択をしたエグジーがスパイとして活躍するからこそ魅力的なのに、今作の犬の扱い方はどうなんだ。ただ、慰めのため、ショックを与えるための道具になっている。ハリーの記憶を蘇らせたヨークシャー・テリアの仔犬は、あのあとどこへ行ってしまったのか。事件解決後、ハリーの足元に控えているシーンなんかがあれば、ものすごく和んだと思うんだけどな〜。

あ、あとJBは死なない。だってジャック・バウアーだぜ?