部屋と沈黙

本と生活の記録

過去が光って見えるのは

きのうは晩ごはんのあとにうっかり寝入ってしまい、目が覚めたのは深夜の12時過ぎだった。食器を洗い、シャワーを浴び、バニラアイスを食べてAmazonで買い物をし、プライム・ビデオのウォッチリストにいくつかのドラマ、アニメ、映画を追加して、うれしいような、途方もないような気持ちになった。

先週はなんだかあっというまに散った桜のこととか、「このところ元気がない」と聞いていた実家の犬を撫でると肋骨が指先で数えられそうなほどだったこととか、久しぶりに仕事で腹を立て、とはいえ自分にも至らない部分があったことに気づいて落ち込んだ。結局“急な方針変更”は撤回されたものの、私がもっとうまくやっていれば、その問題点の再燃が前倒しされ、検討に時間をかけられたかもしれない。

過去を振り返らずにはいられない。落ち込んだことも、楽しかったことも。過去の記憶は存在かもしれないから、思い出したい。自分の至らなさに気づきたい。知らないでいることのほうがおそろしかった。

でもとりあえずは元気を出そう。食べることと寝ることを優先して、うまく落ち込むのだ。

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月曜日。なめ茸入りの筍ごはんを土鍋で炊く。右手にちらっと写っているのは、妹の夫の友人が釣ったアジ。新鮮な魚は美味しい。

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火曜日はASPARAGUSの配信ライブのアーカイブを観ながら、アスパラガスの豚バラ巻きを食べた。いつか絶対にライブへ行くという思いを新たにする。このことはまた別に書いておきたい。本当にかっこよかった。

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水曜日と木曜日は市販のルーで作ったガパオライスの前後編。手抜きと本気。きのうと今日で同じものを食べるなんて、という人もいるみたいだけれど、私はあまり気にならない。好きなものならなんぼでも食う。目玉焼きを丸くするため、アルミホイルでなんちゃってセルクルを作ってみたものの、失敗。

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付け合わせのポテトサラダはすごく簡単。作るのに10分もかからない。じゃがいもを電子レンジで蒸しているあいだに玉ねぎをスライスし、あつあつのじゃがいもに気をつけながら皮をむいて、スプーンの背で簡単につぶし、イタリアンドレッシング、塩、黒胡椒、ハーブミックス、マヨネーズ、スライスした玉ねぎを入れて混ぜるだけ。保存容器のなかでやっちゃえば洗いものも少なくてすむ。

向井秀徳が「酒場に入ってボールにいっぱいのポテトサラダを注文してえ」と歌ったように、お酒のアテにぴったり。

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金曜日は、ガス代を支払うために立ち寄ったコンビニのバターチキンカレー。買ったまましばらく戸棚のなかで眠っていたオリーブの瓶を開ける。

美味しいものは好きだけれど、料理が好きかと問われるとそうでもない。今日の晩ごはんも、プレモルの6缶パックについていた金箔入りの焼き鳥の缶詰に、焼いた長ネギを和えてみただけだ。以前、同じものを食べたときに結構塩辛かったから、ちょうどいいかなと思って。長ネギはもっと焼けばよかったし、冷蔵庫にあったチューブのレモンペーストを調子にのって入れすぎたせいで、すこし酸っぱかった。酸っぱいものは苦手だ。

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あらためて、本日午前3時半。お腹が空いてきたから無理矢理にでも眠ろうと布団のなかにもぐり込み、なんとなくTwitterで見かけたポカリスエットの新CMを眺めていたら、なんだか泣きそうになった。

すぐに柚木麻子の『終点のあの子』を思い出す。本棚の部屋の本棚に入りきらない本の山から文庫本を引っ張り出して布団に引き返し「フォーゲットミー、ノットブルー」から読み始めた。最終話の「オイスターベイビー」を読み終えたときには、閉め切ったカーテンの四方から朝日が入り込み、枕元のスタンドライトの電球色が頼りなく思えた。

もう一度CMを見返して、やっぱり泣いてしまう。朝っぱらから鼻も瞼も赤い。

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『終点のあの子』には、“その手を離してしまった”女の子たちのことも描かれる。急行片瀬江ノ島行き、まだ青いブナの実。女の子は複雑で、面倒くさくて、寂しくて、可愛いなと思う。私がとくに好きなのは「ふたりでいるのに無言で読書」。

恭子さんは、分析なんてしない。知識もひけらかさない。単に好きか嫌いかを明言する。そこが好きだ。
柚木麻子「ふたりでいるのに無言で読書」より

コマーシャルではなく小説だから、爽やかさばかりではないけれど、このCMが好きな人は好きかもしれない。複雑で、面倒くさくて、寂しくて、可愛い、ガール・ミーツ・ガール小説だと思う。

それにしても、初出は2008年だから、折りたたみ式の携帯電話は「カチカチカチカチうるさい」し、KAT-TUNに赤西君はいないし、チャットモンチーは解散した。“きっともう取り戻せない”ものはきっともう取り戻せないから、光って見えるのかもしれない。

終点のあの子 (文春文庫)

終点のあの子 (文春文庫)