ライブで初めて聴いたときの印象をたよりに、the band apart 9thアルバム“Ninja of Four”の感想を書く。音楽のジャンルに疎いため、素人感丸出しの表現を駆使するしかない。個人的には楽しく書いた。
それに、このあいだのアジゴシ配信で、川崎さんのギターが忍者っぽいから“The Ninja”という木暮さんの話に、荒井さんと速水さんが全然共感していないのも良かった。Twitterでは、今回のアルバムを“スルメ”のように楽しむ人もいる。スルメって、イカじゃんね。イカにたとえる人がいるのなら、他の何にたとえても良いような気がする。
タイトルの“Four”が示すとおり、the band apartが“この4人”であることを強く意識させるアルバムだ。
なお、私は歌詞カードをほとんど見ずにアルバム1枚を繰り返し聴くタイプなので、歌詞の内容にはあまり言及できていません。ブルーレイ付き限定盤については、おまけとして文末に感想を書きました。
1.夏休みはもう終わりかい
ライブでは演奏されなかった曲。サビのさみしい感じがとても良い。後半、小さくギターが鳴って、もうひとつのギターの音が下がっていくところとか、もう、どうしようもなく良い。私は、さみしさと美しさは繋がっていると思う。
2.The Ninja
原さんのベースがかっこいい。サイレン、警告。同じ音を続けて出すだけであんなにかっこいいのはすごい。
原さんのベースはもちろん、荒井さんの歌い出しのタイミングもかっこいい。イントロのコーラスが終わって、すこし間があったあとに入る、あの感じ、あのタイミングがかっこいいと思う。拍の数え方はよく分かんないんだけど……8あったら6で入る感じ(変なたとえだったらすみません)。わりと前が空いていて、余裕のある雰囲気が大人っぽいというか。音や歌詞はコミックソング風なのに、この歌メロが乗っているから、余計にかっこいいんだと思う。
3.アイスピック
メロディが持つ雰囲気のわりに速いドラムが当ててあるところがある。
音源だと、それほど速さが目立つ感じではなかった。ライブとは音のバランスの取り方が違うのかな。いつかのアジゴシ配信では、バンドを組んでいるというバンアパファンのお悩みに、木暮さんが「ドラムの音を基準にして、ベースやギターの音量を合わせると良い」とアドバイスしていた。
それにしても「アイスピック」が良いね。きみはアイスピック。ともすれば凶器だよ。
今って、なんでも共感で繋がろうとする傾向があるじゃん。でも共感って、そんなに良いものかな。みんな同じ、均一になっていくことに、私は耐えられない。共感が狂気を帯びると同調圧力になるんだと思う。私は共感よりも尊敬や尊重で結ばれる関係のほうが好きだな。共感は入口で、目的地にはしたくない。
使い方を間違えれば凶器にもなる。それでも鋭利でありたい。
バンアパっぽいフレーズがたくさん入っていたような気がする。
“夜の向こうへ”のパスティーシュなのかな。……パスティーシュはまぁ、パロディとだいたいおんなじ意味なんだけど、茶化す感じが含まれていればパロディ、と勝手に使い分けている。和歌の世界では本歌取り。
“夜の向こうへ”に、“KATANA”、“Taipei”あたりの雰囲気が混ざっているような感じ。歌メロは“夜の向こうへ”よりも低い位置で鳴っていて、これはアルバム全体にも言えるんだけど、低いところで鳴る良い歌メロが多い?ような気がする。バンアパにしては低い。そのせいか、楽曲そのもののかっこよさに加えて、なんともいえない色気というか、雰囲気のあるアルバムになっていると思う。
5.キエル
なんか、古き良き外国の映画に出てくる田園風景っぽいコード進行だったような……?
なんだこの抽象的な感想は……。うーん、田園風景というより、アメリカのだだっ広い草っ原かも。『バグダッド・カフェ』みたいな。
……いや、もっと不穏だな。『バグダッド・カフェ』に『インヒアレント・ヴァイス』を混ぜたような感じ。
……音楽のジャンルを知らないのは不便だな。
あと、荒井さんの音域の広さを堪能できる曲だと思う。同じメロで1オクターブ違うもんね?
低いところで鳴るメロディって良いよね。結構好き。たとえば、くるりの“ばらの花”とか。映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌になった“ハイウェイ”も良い。岸田繁の声で聴くとそんなに低さを感じないんだけど、私の音域ではうまく出せないところがある。
その点、バンアパの歌メロは、これまで「上手く出せない」と感じたことがなかった。とはいえ、車のなかでハミングしたり、フレーズだけ歌ってみたりする程度だから、断言はできないんだけど……。
歌メロの音域の傾向って、もしかして“界隈”の違いなのかな?バンアパってたしか最初はパンク界隈にいたんだよね?違う?なんか、パンク界隈は歌メロのキーが高そう(無知による偏見)。
私は低音域で鳴る良いメロディが好きだから、原さんのベースも好きなんだろうな。
6.SAQAVA
ボーカルのメロディが、なんかこうぐっときそうなんだけど、曲のほうはバチバチっていうか……メロディが歌ってると曲も歌わせそうなのにそうしない、走らせてる、みたいな感じ。
超可愛い曲だと思う。子犬系。まごうことなきアイドル。ハンドマイクを両手持ちして、きょとん顔のまま「知らない」「君のせいじゃない」と歌うアイドルだ。
歌メロを乗せる曲のほうは、わりと音が詰まっているから、後ろで演奏するおじさんたちは超忙しい。テンポも速いし。でも、歌メロちゃんはアイドルなので、そんなことはお構いなしにきゃぴるんしてる。それがまた可愛いっていうか。伸びやかな、良い歌メロ。もうひとつ持ち歌があるとしたら“殺し屋がいっぱい”だね。そんなアイドル。すごく可愛いと思う。
ライブでは、歌メロのアイドル性に気づかなかったな。超忙しいおじさんたちが超かっこよかった。
7.酩酊花火
イントロ、ちょっとずれたら悪酔いしそうな感じがおもしろい。
イントロのベースラインが酩酊している。ほろ酔いのギターに酩酊したベースが絡む、あの感じってなんなんだろう?不思議だな。お酒を飲みすぎたら命の危険があるみたいに、1音でも踏み外したら死ぬ、ぎりぎりのところで成立しているメロディライン、という印象。でも、極限状態からくるヒリヒリした感じはなく、あくまでも酔っ払っているのがおもしろい。
「船の町」は大船渡なのかな。ツアーファイナルが行われる大船渡の人にとって、特別な1曲になりそう。
8.bruises
結構好きな感じだった。気がする。音も意味も抜け落ちて「なんか好きかも」という感触だけが残っている。あと、照明が青かった。
音の重なり方がすごくきれいだと思う。曲全体が映画っぽいというか……。なんだかよく分からない粘性の地獄みたいなところにいるのに、カットやシーンが異常にきれいで、意味が消え失せても、映像そのものが詩や啓示になっているような映画、を観たときの感覚に近い。あるいは宝石みたいな。宝石の美しさには意味が含まれていない。元素結合の結果としてただ光っている、プリミティブなもの、という感じがする。「なんか好きかも」というか、だいぶ好き。意味の入れ物にすぎない言葉では太刀打ちできないと感じる。
9.夕闇通り探検隊
アジゴシ配信の“話す会”で話してたやつだ!
何を言っているんだ、と思う。めちゃくちゃ良い曲じゃん。ライブ後半は既に飽和状態で、ものすごく雑な感想になっている。
いちばんMV映えしそう。ただ“リード曲”という感じはしない。ていうか、このアルバムにはリード曲がないような気がする。アルバムを引っ張っていく特定の1曲があるというより、バリエーションに富んだ10曲すべてがthe band apartだ、みたいな。
あとは、後半に手拍子ポイントがある。気がする。ライブでやったんだっけ?覚えてないな……。
ライブに行くと、たまに複数人が同じタイミングで手を挙げるところがあって、なんでそうなってんのか分からずに戸惑っていたんだけど、今回は分かったぞ。音として入っていなくても、手拍子ポイントがあると分かったぞ!……たぶん。違う?
10.レクイエム
“レクイエム”ぽくない気がしたけど、そもそも“レクイエム”のなんたるかを知らない。これも照明が青かったっけ?
小さな声で歌う子守唄のようだ。個人的には、しょんぼりしていた時期に思いつきで買った電子ピアノで、子どもの頃に習った練習曲を、自分のためだけに弾いていたときのことを思い出す。死者の安息を願うのがレクイエムだとして、その音で本当に安息を与えられているのは、生きている者たちなんじゃないかと思う。あるいは、祈りもそう。こんなことを言うと神様に怒られるかな。
木暮さんのコーラスも新鮮で良い。良い曲だ。
おまけ
限定盤に収録された年始のコースト、アンコールの“K.and his bike”がすごかった。本当に、異常に良かった。
ただ、酔う……。自宅のテレビがA3くらいの大きさしかなく、せっかくのブルーレイだからと実家のテレビ(55インチ)で視聴したら、映像の揺れで酔いそうになり、通して観ることができなかった……。カット数が多くシーンも短いため、全体的にせわしない印象。「被写体を撮る」というよりも、被写体を画のどこに置くか、どういうふうに余白を取るかで構成すると良さそう。サッカーボールがあるところにだけ集まってもだめ、みたいな感じかな……。あとは音楽と一緒で、止めるところはばちっと止めたほうがかっこいいと思う。
ここの画面構成は好き。でも、あっという間に次のカットへ移行してしまうのが残念だった。……まぁ「言うは易し」ですよね。すみません。動く人を撮るのって、難しいんだと思う。
あと、原さんが「身体は消耗品」「使い潰して死んでいきたい」と言っていたのが、本当にかっこよかった。