部屋と沈黙

本と生活の記録

あちこち山口

ゴールデンウィークと土日を使って、県内をあちこちしてきた。

第30回 萩焼まつり
私にとっては2019年以来の萩焼まつり。今年は萩市民館、萩・明倫学舎に特設会場が設けられた。コロナ禍をきっかけに始まった「街全体が会場」も悪くないんだけど、やっぱり、いろんな窯元が一堂に会するほうが、お祭り感があって良い。



萩・明倫学舎

歩く道すがらに松ぼっくりを拾う*1。やたら松の木が目につくのは、吉田松陰松下村塾だから?道端の夏みかんの木には白い花が咲いている。


ぐい呑みと、取っ手がないタイプの急須を購入。窯元はどちらも白景山。ちなみに、2019年に購入したカップも白景山のものだった。

急須は八宝茶を飲むのにも良さそう。なつめやクコの実を食べるときに、お皿へ移し替えなくてもいい。


以前はケメックスと小皿で代用

萩のお酒“東洋美人”を萩焼で呑む。このぐい呑みは、わりと萩焼らしい萩焼だと思う。なんていうか、、萩焼って生姜せんべいに似てない!?小学生のころからもうずっとそう思っていた。白いところがお砂糖、茶色いところがお煎餅。つまり、このぐい呑みはお砂糖多め。


道の駅あさひにも寄り道。学校給食の人気メニュー(らしい)チキンチキンごぼうと、綿花のドライフラワー(1本150円くらい)を買う。普段あまり見かけないものや、美味しいものがあるから、道の駅は楽しい。

シルバニア村のおいしい時間展
防府市地域交流センター アスピラート

私の実家にもシルバニアファミリーのお家と家具がいくつか残っているけれど、人形ーーこの場合“人形”と呼んでいいのかーーを買ってもらった記憶はない。妹のうさぎがひとつあった気がするから、おそらく、幼いころの私は人形よりも家具をねだったのだろう。「人形を遊ばせる」というよりは、小さくなった自分を想像して遊んでいた。


テーブルや椅子が小さいだけで、なんでこんなにも可愛いのか。もののデザインに関しては好き嫌いがはっきりしているはずなのに、ミニチュアになると、その境界が曖昧になる。小さいことそのものがすでに可愛い、みたいな。この感情のからくりを、うまく説明できない。

特に感動したのはこれ。

陶器の食器だよ〜!持ってる子いたよ〜!可愛いなぁ!!!

昔のシルバニアファミリーは、プラスチック製の家具以外にも木製の家具とか陶器のお風呂もあったよね。お風呂の栓は、ちっちゃいコルクだった。「シルバニアファミリーはちょっと高価なおもちゃ」というイメージを持っていたけれど、今は意外とそうでもない。たぶん、ほぼすべての家具がプラスチック製だからかな?子どもにとっては、自分のお小遣いやお年玉で、ちょっとした家具のセットが買えるなんて、きっとすごく嬉しいよね。

個人的には、トミカのプレミアムラインみたいに、クオリティの高い木製の家具や陶器の食器があると嬉しいな〜!

ポップアップストアでは、海外版のハリネズミのあかちゃんを購入。こんな子いたんだね。可愛い……!その後、ネットでいろいろ見てたら居ても立っても居られなくなり、他にもあれこれ買い足してしまった。それはまた次の機会に。

あと、イベントに出店されていたお菓子屋さんの焼き菓子がどれも本当に美味しかった!ものすごく好きな味。今まで食べてきた焼き菓子のなかで、いちばん好きだ。


山口市のタルトアンドカヌレ

暮らし系ほっこり界隈の焼き菓子だと、菜種油だとかきび砂糖だとかで優しいお味になりがちじゃん。もちろん悪くないよ、悪くないんだけど、、でもやっぱり、バターのパンチ力には敵わない。私はこういう、バターをしっかり使った贅沢な焼き菓子がいちばん好き。

周南蚤の市
徳山駅前で開催された“周南蚤の市”。古道具店を中心に、お菓子屋さんや植物店のブースが並ぶ。

天気も良く晴れて、想像していた以上の人出。人波に乗りながら一帯を巡り、いくつか買いものをした。

ガラス製の小さなグラスとピンズ、刺繍リボン。グラスには花の模様が入っている。刺繍リボンは新品で、ほかは古いものだ。

古いものを見るのは楽しい。古いものには良いものが多いような気がする。生活のなかで壊れ、不要になれば捨てられてしまう食器や道具が、現在まで壊れずに残っているということは、つまりそれらが大切に取り扱われてきたことの証だからだ。単なるノスタルジーや懐古趣味ではなく、長いあいだ誰かに大切にされてきたものの良さに惹かれる。

ある人にとってはただの中古品、ガラクタであり、なんの価値も持たない。そもそも中古品が嫌いな人もいるだろう。以前、三条京阪ブックオフで、尾崎翠の創樹社版『第七官界彷徨』を見つけたときは、寒気がするほど嬉しかった。

ブックオフでは画一的に定価の半額で値付けされていたけれど、当時の古書市場では定価以上で販売されていた書籍である。しかも、私が好きな三大小説家の絶版図書だから、もう、震えたよね。

価値を知る持ち主が手放すのなら、きっと然るべき古本屋に持ち込むはずだから、おそらく、その持ち主が亡くなり、価値を知らない相続人に引き継がれ、まとめて処分されたのだろう。ブックオフに持ち込まれたのが不幸中の幸いだった。二束三文にしかならないならすべて破棄、なんてよくある。古くて良いものはこうやって散逸し、失われていく。

現在「第七官界彷徨」を含む尾崎翠の小説は、ちくま(日本文学、集成)、河出、岩波、それぞれの文庫に収録され、気軽に読めるようになっている。私の場合は、創樹社版以外にもちくま(集成)と岩波を持っており、そのすべてに「第七官界彷徨」が収録されている。……ただ読むだけならいらんよ、ふつう。ミニマリストが聞いたら卒倒する。それでも私は、野中ユリが装幀し、山田稔が解説を寄せた創樹社版『第七官界彷徨』を今も大切にしているし、そのときが来たら、これから先も大切にしてくれる人に引き継ぎたいと思う。

もちろん本だけでなく、これまでに買い集めた食器や雑貨も、いつか、それを好きだと言ってくれる人に譲ることができたら幸せだろうなと思う。できれば仕舞い込んだりせずに、生活のなかで使ってほしい。高価なものではないけれど、良いものばかりだから、捨てるには惜しい。

結局、私は私が選ぶものが好きなのだ。本棚を見れば「まじで良い本ばっかり、センス良すぎる!」と思うし、食器棚を見れば「良い感じのものばっかり、センス良すぎる!」と思う。

自分が自分にとっての「センスの良い人」であれば幸せ。自分のなかの「好き」を特化させるだけで、誰でも簡単に「センスの良い人」になれる。

*1:松ぼっくりを保管するには、水洗いののち1週間程度冷凍し、虫干しならぬ虫凍らしのうえで乾燥させるといいらしい。