部屋と沈黙

本と生活の記録

「ダーリンッ♪」

男の子のスマートフォンから「ダーリンッ♪」の呼び出し音。彼は端末の表面を素早く撫で、テーブルへと戻す。それから数分とたたないうちに、また「ダーリンッ♪」「ダーリンッ♪」。
若者のラブ・パワーはすごいな(照れくさくないのか?)と思っていたら、母親のスマートフォンからもおんなじ音がした。
「ダーリンッ♪」
すなわち私の父親から――、ではなく「ラインッ♪」である。そうか、LINEの「ラインッ♪」か!

東ドイツ的貧乏性で未だに二つ折りの携帯電話をパカパカさせているから、LINEもよく知らない。それで別にいいやと思っていても、2008年製の携帯端末は日増しに使えなくなっていく。wikiにアクセスできない、amazonにログインできない、挙句の果てには「この端末では、2016年3月14日をもってYouTubeの動画再生をご利用いただけなくなります」だってよ!なんだろう、ミニマリストになるつもりもないのにミニマムになっていくこの感じ。

スマートフォンに買い替えたら、と想像するのは楽しい。instagramに小洒落た写真をアップしたり、wearでお洒落なちびっこを眺めたり、radikoでいろんな町のラジオを聴いたりするんだ。あぁいいな楽しそう、まるで自分がアップグレードされるみたい。それに、「ラインッ♪」のたびに甥っ子が目を見開いて「らいんっ!」と口真似するのがめちゃんこかわいいんだった。興奮しすぎて「ぎゃいん!」としか聞こえないところも。

「思っていた以上に広い」

友人の結婚パーティーついでに、2泊3日の静岡旅行をしようと決めた。そのせいか、ここ数日は静岡のことばかり考えている。googleの検索窓に「静岡 カフェ」とか「静岡 3月 気温」とかを打ちこんで、雲をつかむような気持ちでいる。何を見て、何がしたいのかを想像できないくらい、静岡のことを知らないのだった。

「お茶 富士山 うなぎパイ」以外で新たに確信したのは、静岡が「思っていた以上に広い」こと。ペーパードライバーなのが悔やまれる。

かわいい〈かんくん〉

遊びに来た2歳になる甥っ子が、いつのまにか自分のことを〈かんくん〉と呼んでいる。断わっておくが、彼の名前のなかには〈か〉も〈ん〉も(ついでに〈く〉も)ない。むろん、苗字も含めて。なぜだ……。でも、生半可でなくかわいい。
「ぼーる!ころころー!」とジェスチャーつきで、ボウリング遊びをしたことを教えてくれる。座っていた椅子からわざわざおりて、だ!「上手にできたんやね」「うん!」である!