部屋と沈黙

本と生活の記録

チェスターコートの選び方

チェスターコートを選ぶうえで、いちばん大切なのは肩だと思う。胴まわりがもったりしたごくシンプルな筒状のコートだから、肩がオーバーサイズだと本当にもったりして見える。「背が高くないと似合わない」なんて言うけど、実際は身長やら着丈うんぬんより、肩が合うか合わないかだ。

大抵の既製服はゆったりめに作ってあるから(アウターだとなおさら)、平均身長がMサイズを着ても、肩が余ってもったりしてしまう(似合わないと思いこむ)。そこへ、ちょっと背の高い人が同じMサイズを着ると、果たしてぴったり様になるのだ。ということは、単純にサイズダウンすればいいんだけど、アウターをSMLの3サイズちゃんと作ってるメーカーって少ない。これはもうお直しか、もしくはまさかの肩パット?

なんて思いながら、結婚パーティーへ着て行くための薄手のチェスターコート(Mサイズ)を買った。サイズ感はまずまず。肩の切り替えがもう少し内側に入ってたら、もっと華奢に見えるのに。とりあえずボタンはつけかえる予定。

日々の漱石

f:id:roomandsilence:20160307214134j:plain:right木曜日、『門』完結。105年ぶりの再連載は全104回、廃品回収のせいで1、2回分の読み落としはあるものの、とりあえずは読んだと言えるだろう。なんともつかみどころのない話だった。それが新聞連載だからなのか、1回1回のあいだに個人的な日々の生活が割り込んでくるせいで、ひとかたまりの小説を読んだ、という気がしない。いつも、脱衣所の洗濯機の上に新聞を広げて、歯を磨きながら読んだ。

9日から『夢十夜』、4月1日から『吾輩は猫である』が再連載される。どちらも「いつか読みたい」と思っていた小説だから都合がいい。日課はしばらく続きそうだ。

「ダーリンッ♪」

男の子のスマートフォンから「ダーリンッ♪」の呼び出し音。彼は端末の表面を素早く撫で、テーブルへと戻す。それから数分とたたないうちに、また「ダーリンッ♪」「ダーリンッ♪」。
若者のラブ・パワーはすごいな(照れくさくないのか?)と思っていたら、母親のスマートフォンからもおんなじ音がした。
「ダーリンッ♪」
すなわち私の父親から――、ではなく「ラインッ♪」である。そうか、LINEの「ラインッ♪」か!

東ドイツ的貧乏性で未だに二つ折りの携帯電話をパカパカさせているから、LINEもよく知らない。それで別にいいやと思っていても、2008年製の携帯端末は日増しに使えなくなっていく。wikiにアクセスできない、amazonにログインできない、挙句の果てには「この端末では、2016年3月14日をもってYouTubeの動画再生をご利用いただけなくなります」だってよ!なんだろう、ミニマリストになるつもりもないのにミニマムになっていくこの感じ。

スマートフォンに買い替えたら、と想像するのは楽しい。instagramに小洒落た写真をアップしたり、wearでお洒落なちびっこを眺めたり、radikoでいろんな町のラジオを聴いたりするんだ。あぁいいな楽しそう、まるで自分がアップグレードされるみたい。それに、「ラインッ♪」のたびに甥っ子が目を見開いて「らいんっ!」と口真似するのがめちゃんこかわいいんだった。興奮しすぎて「ぎゃいん!」としか聞こえないところも。