部屋と沈黙

本と生活の記録

短文で突き刺せ

半ばから仕事が立て込み、そのせいで末の4連休すら素直に喜べなかった9月。連日の時間外申請と、このあいだの金曜日なんかは疲れが出たのか左目のまぶたが時折り痙攣していた。そんななか、teamsに「絆モード」とかいう謎のモードが搭載されていることに気づく。切り替えると、参加者らが講堂に並ぶ座席のようなところで仲良く着席させられていた。

「絆」という言葉は嫌いだし、くだらね〜と思いながらも、こういうくだらなさは悪くない。ばかみたいで、すごく良い。

悲しいから やめてくれ 信じるとか 裏切るとか
絆と言わないでくれ 耳が腐る
the band apart “禁断の宮殿”より

原さんが作詞作曲したという“禁断の宮殿”を思い出しながら「絆」の気持ち悪さを思う。言葉は空洞で、持ち運びのできる小さな箱だ。でも「絆」という箱にはもう、おそらくあの震災以降、そもそもの意味を超えた様々な思惑が隙間なく詰め込まれた気がする。箱には色がつき、余地はない。なんて言えばいいんだろう……強要される「絆」みたいな。そんな「絆」は絆じゃない。

禁断の宮殿

禁断の宮殿

  • 発売日: 2016/11/09
  • メディア: MP3 ダウンロード

かっこいいので、ぜひ聴いてみてほしい。ちなみにAmazon musicにはある。ほかのサブスクはどうかなあ。


土曜日、コーヒーと小さな菓子パンで朝ごはんをすませたあとは、惰眠に次ぐ惰眠、一日から脱落して過ごす。

20時、松重豊『空洞のなかみ』の刊行に先駆け、朗読動画が公開された。伴奏は向井秀徳

松重さんの文章と朗読が本当に素晴らしい。向井さんの歌は今ひとつ。私が思うに、向井さんはげっぷを我慢してたんじゃなかろうか。冒頭、げっぷの話をしていたにも関わらず、カウンターにはビールがあったし、おそらく、そういう類の呪いだろう。

夜、お湯の量を減らした濃いめの「うまかっちゃん」に刻んだネギを入れ、作り置きと買い置きのお惣菜で野菜をとり、一口大のトマトを一口で食べた。


日曜日は陶器の日かつ古書の日。うつわ好きかつ本読みの私にぴったりな誕生日だ。ちょうど陶器市をやっていた雑貨屋さんで、ふたつ買う。手前が島根、奥が沖縄の窯のもの。

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誕生日にこれといった予定もなく、母に呼び出されるがままお茶をしながら、なんかもっとこうキュンキュンするようなことはないんかいと我ながら呆れるけれど、30うん年前の今日も私はやっぱり母と一緒にいたんだし、まあいいかと思う。おめでとう、私。

ということは、Twitterを始めて1年か。文末に(続く)と入れて、だらだら書き流してるのだけは好きになれんな。たった31字で本質を突くから短歌は美しくて、Twitterも140字だから良いのに、(続く)、(続く)、(続く)、……こんなの鋭利じゃない。ブログじゃなくTwitterを選ぶなら、せめて短文で突き刺せよ。

夜になってようやく、9月を1年から切り離す。もう10月だ。