部屋と沈黙

本と生活の記録

the band apart “September e.p.” 感想

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“MTZ”
かっこいいな〜。ほんとかっこいい。これ、スピードは一定だよね!?スピードは一定だけど、切り分け方が違うというか……。でも、最初のほうはリズムが重なってるような気がするんだよなぁ……。表だと思っていた拍が、もうひとつのリズムの裏とくっつく、みたいな?音がそのまま詰まってるところと、半分くらい抜いてるところと、三拍子が入って音の頭が揺れてるところとあって……(スイングしてるっていうのかな)?

あー分からない、教えて!リズムに詳しい人!……仕方がないからケーキで説明する!

一口目からいきなり二段重ねで、しかも土台のスポンジケーキの上にバターケーキがのってるから「まさか」と思い、やがてスライスされたフルーツが層になって詰まりあげ、かと思えばクリームがたっぷりとはさまり、途中、切り分ける大きさが違うから「それじゃあ苺がのってないとこあんじゃん!」とかいう一悶着ののちにとても美味しい、みたいな曲。

それにしても、ものすごく“一曲目”感がある。印象は冬で、いちばん寒い冬の、2月の、冷たい空気を鼻から吸う感覚がある。あとは、小さくて俊敏な鳥の群れが同じ方向へ飛び立つ光景。“はじまり”の、そんな感じ。

この曲で始まるアルバムを聴いてみたい。でも、それと同じくらい、この曲で始まるアルバムを聴いてみたくない。私の想像なんか超えてしまえと思う。


“You never know”
第一印象は「やけにトレンディだな……」で、つまりは「ややダサ」のかっこよさなんだけど、そもそも「トレンディ」は「流行の」とか「最先端の」とかいう意味なのに、なんで「ややダサ」の印象があるんだろう。

トレンディドラマにトレンディ俳優、「トレンディ=最先端」であるはずなのに、なぜかどれも「ひと昔前の」もののように思える。もしかすると、流行や最先端などという新しいものはすべて、最初から「古くささ」を内包しているのだろうか?

まずはただ聴く。歌詞カードは見ずに、歌も全体の音として聴く。繰り返し聴いて、自分なりの印象が定まってきたころに、ようやく歌われている言葉の意味が入ってくる。

“背中に張り付いたシーツみたい”なんて、何十回も聴いて初めて「……ん?……え、うそ裸じゃん!」と気づく。“すがれぬまま眠れない Midnight”は“素肌のまま眠れない ミッドナイト”に空耳、歌詞カードには“理由(わけ)”とあり、ますますトレンディで笑う。本気(マジ)、みたいな。


おまけ
今回のパーソナルインタビューは木暮さん。1stのころから彼らが作る楽曲が抜群に好みだったのはもちろん、歌詞の雰囲気もすごく好きだった。ブックレットに挟み込まれた対訳を読みながら、曲も歌詞も良いなんて、ほんとどうなってるんだろうとどきどきした。

木暮さんの書く歌詞は、何かに対する印象だったり、一瞬だったりを、そのまま指差す感じがする。過剰に飾り立てず、かといって欠けもない。そういうところがすごく好きだ。

September e.p.

September e.p.

  • アーティスト:the band apart
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: CD