部屋と沈黙

本と生活の記録

軟弱者の健康

先週土曜日の深夜から体調を崩し、一時入院していた。幸い大事には至らず退院し、今後の通院も必要ないくらいに回復したのだが、入院中の「あれがない」「これがない」を経て、今、ようやく「完璧な持ちものリスト」を作ることができるかもしれない。

いい加減、旅行前に最適な汎用性のある持ちものリストを作らなければ。まともなリストさえあれば、どんなに疲れていようと半分寝ながら荷造りできる。
以前リスト化に挑戦したときは「これで本当に充分なんだろうか」という不安感から、末尾に「その他」と付け加え、すべておじゃんにしてしまった。「その他」ってなんだよ。
村上春樹が「完璧な文章などといったものは存在しない」と教えてくれたように、完璧な持ちものリストなど存在しない。「その他」という謎の幅を持たせて、ようやく完璧に近づく。
2019.12.8「週報 12/2〜12/8」より

リストを完成させ、事前にパッキングしておけば、旅行前の荷造りはもちろん、入院するときや、災害時の非常持出袋にも応用できるだろう。市から配布されたハザードマップの裏のチェックリストと、病院でもらったしおりを見比べながら、今がそのときと思う。

ちなみに、持ち込んでよかったな、と心底思ったのは、意外なことにクッションだった。入院中はあまり眠れないと聞いていたけれど、かなり消耗していたため、ほとんどの時間を寝て過ごした。寝過ぎて身体が痛くなれば腰にあててみたり、なにより、抱えていると安心した。さながら、もらわれてきた子犬である。

入院や災害によって、もらわれてきた子犬並みに環境が変化したとき、ものに対するこだわりが強い私のような軟弱者は、日常の匂いが染み込んだものや、普段から好きで使い続けているものが近くにないと、そのうち壊れてしまうだろう。もちろん、間に合わせで間に合わせることもできなくはない。ただ、そういうちょっとしたズレが積み重なれば、いつかバランスを失い、すべてを巻き込んで駄目になってしまう。

たとえば良い匂いのする石鹸、スキンケア用品その他もろもろ、ちくちくしない肌着、好きでずっと使っているクッション、ブランケット。突然の非日常で大きなストレスを抱えているときこそ、できる限りの日常を持ち込みたい。ライナスの安心毛布のように、取るに足らない日用品でさえ、私を大きく支えている。

心当たりのあるすべての軟弱者は、新品の非常持出袋や入院セットに、愛着のあるくたびれた日常を入れておくといいかもしれない。