部屋と沈黙

本と生活の記録

髭 “LiVE STRM HiGE” 感想

なんかもう配信コンテンツにほいほいお金を使いすぎている。

音楽だけが好きならそれも構わないんだけど、幸か不幸か私には好きなものがたくさんあるのよ。本も、洋服も、美味しいものも、小さくて美しくて可愛いものも、好きで好きでたまらない。田舎のしがない事務員の稼ぎなんてたかが知れてる。100円均一で買ったオバケのキーホルダーにきゃっきゃする安いオンナだから事なきを得ているだけで。

とにかく「ほいほい」はやめよう。私は安くなんかないぞ。

だから、気になっていた髭の配信ライブも、直前まで観るかどうか迷っていた。このコロナ禍のステイホームが生んだ接点に結ばれて『ねむらない』を聴き、好きになって、眠らずに繰り返し聴いたものの、まだ他の曲をほとんど知らない。そんなおろしたての“にわか”に分かるのか?しかも、ついこのあいだ“かっこいい花瓶”をほいほい買っちゃったし……。

そんなとき、「みんな!!!!!観るんだよ!!!!!きっといいことがあるからねーーーーー!!!」というツイートに笑っちゃって、そうだった、今年は「移動」の年にしたいんだった、とりあえず行く、観る、聴く、書くんだった、と思い出す。お金は使うものだし、「移動」のなかには「物語」がある。

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いつも言葉をこねくりまわし、できれば美しくカーブさせたいと思っているせいか、逆にシンプルでストレートな物言いに弱い。the band apart“AVECOBE”の「そいつはきっとバカだろ」とか「正直に言え」とか好きだもん。太宰治の「刺す」とか。いいよね、混じりっ気なしで笑っちゃう。

おもしろいな〜。当然だけど、あらためて良い文章。

観ると決めたら途端に嬉しくなって、開演50分前に急いでスーパーへ行き、安い赤ワインとスモークタン、チーズその他を買って帰る。

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2020.9.10 thu.
FEVER

髭初の配信ライブは、初めて聴く「虹」からスタート。「僕を見ておくれ」「思い出しておくれ」「僕を」「僕を」「僕だけを」と繰り返すのがすごく良い。何回でも言う、私、シンプルでストレートな物言いに弱いのよ。演奏も良くて、CD音源より今回のライブver.の方がドラムが軽くて好き。見てほしい、思い出してほしいっていう真っ直ぐな想いと焦燥が走っていく。

それと、コード進行(?)っていうのか、少しかなしい感じがするのも好き。天気雨みたいな。明るいのに雨が降って……あ、だから「虹」なのかも。きれいだな。かなしみって、たぶん美しいんだよ。喜怒哀楽のなかで、かなしみがいちばん美しいような気がする。今はまだ上手く言えない。ただ、すべての本質のような気がしている。

とにかく、観て良かった。「きっといいことがある」って、本当だった。ライブに行きたい。飽きっぽい私にしては珍しく、アーカイブを繰り返し繰り返し聴いている。

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それにしても最後の曲の「闇をひとつまみ」が本当に素晴らしかったな。ものすごく「今」だった。

音楽でもなんでもそう。「今」のために狙って作ったんじゃないものが「今」にばちっとはまるっていうのがいちばん良くて、なんていうか「意図してない」のが良いんだよ。マーケティングが悪いとは思わないし、むしろ人の行動原理とか心理っておもしろいけれど、思惑とか目論みとかなしで、ただ美しいまま「今」になるのが良い。

それってたぶん、それがその時その時の「本当」だったからだと思う。偽りのない「本当」はずっと本物だから、時代によって通用しなくなったりはしない。「〇〇のため」って、一歩間違えればお仕着せがましくなってしまう。だから、取り立てて才能のない私みたいなのは、自分のために書くのがちょうどいい。誰の邪魔もしない感じで。それでいい。その時その時の私の「本当」を書いていれば、いつか誰かの本物になるかもしれない。

言っとくけど、そこのお前だってそうだからな。お前はお前の「本当」をやっていればいい。自分規模で。

うん、酔っ払ってるな!お酒が好きです!


おまけ
ライブ後半の須藤寿は折りたたみできるエコバッグ(新グッズ)をポケットに入れ、持ち運びながら演奏していた。それはもう、ライブ終了まで持ち運びしていることを思い出させない驚異の携帯感だった。