部屋と沈黙

本と生活の記録

置き去りになんてしない

今日は何もしなくていい。私は予定のない日が好き。「何もしなくていい日」は「何をしてもいい日」だから。

きのうはひと通りの家事をすませてからアパートの契約更新に関する電話を2本入れ、不動産屋へ行き、美容院へ行き、久しぶりにジムで泳ぎ、濡れた水着のためにもう一度洗濯し、干し、疲れ果てて眠ってしまった。

そもそも週の初めから、なんとなく据わりが悪かった。相変わらず仕事が立て込んでいるのもあるけれど、様々な“知らせ”と“思考”が散漫して、どこにもたどり着かなかった。扉はあるのに鍵がない、鍵はあるのに扉がない、そんな感じで、スマートフォンのメモアプリに小さい文章を打ち込んでも、その先を続けてしまえば全部嘘みたいに響くような気がした。1日のすべてが書きかけの日記のように途切れ、置き去りにされる。

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この落ち着かなさは、月曜日の朝から健康診断のために行った病院の、座り心地の悪いソファのせいでもあった。左右の視力差は相変わらず、採血ではいつものように両腕を見比べられ、刺す直前に「ちょっと痛いかも!」と言われた。そういうときは気兼ねなく「いてっ!」と応えられるのでいい。何も言われないと、痛くても我慢しちゃう。今回はやや失敗だったらしく、まだ青痣が残っている。

心電図は、一般的な波形とは逆に出ているところがあるらしい。これもいつものこと。

「胸が苦しいことはない?」
「ありません」

可愛くて、かっこよくて、かなしくて、胸が苦しいことはままあると思いながら、そう応える。

木曜日の雨は、不思議と私を落ち着かせた。いつもなら洗濯物がよく乾く晴れの日が好きで、タオルの乾き具合と私の機嫌の良し悪しは相関関係にあるのに。その日は早く寝て、金曜日の朝にペトロールズのライブアルバムが完成したという“知らせ”を受け取り、収録曲を見てさらに嬉しくなった。6月に行われるはずだったライブ“Mr.Steady”で聴きたいと思っていた3曲が全部入っている。

2/8(土)
トロールズのライブチケットを買う。今回は福岡にした。去年行った広島クラブクアトロは、階段の上り下りが大変だったから……。ないものねだり、誰、ホロウェイとか聴きたいな。楽しみ。
2020.2.11「見知らぬ人よ/週報 2/3〜2/9」より

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金曜日のバンアパの配信では、木暮さんが「今後も月1くらいは配信を続けたい」とおっしゃっていて、それもすごく嬉しかった。このコロナ禍が明ければ、いなかの民はまた少しずつ忘れられていくんだろうなと思っていたから。

いくつもの素敵なイベントが東京で催され、その親密そうな空気を外側から眺めていた。平日に開催される文芸関係の小さなイベントなんて、東京にいなければ行くこともままならない。オンラインイベントが盛んになったのも、ソーシャルディスタンスという名の分断が“東京の内部でも”起こったからだろう。もし、どこかの地方都市だけの分断だったのなら、そのまま切り取られ、置き去りにされたかもしれない。いつもみたいに。

近くにも人がいて、遠くにも人がいる。ツイートの後ろに、文章の後ろに人がいる。生身の、実物だけが持つ存在感には代えがないと分かっているから、小さくても遠くまで響く声があるなら、私はそれを使ってみたい。

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