部屋と沈黙

本と生活の記録

庵野秀明展 感想

山口県民としては観に行っておきたいと、会期終了間際の庵野秀明展へ行ってきた。

私に「日本のおたく四天王」と呼ばれる庵野秀明の存在を教えたのは、安野モヨコのコミックエッセイ『監督不行届』だった。私は庵野秀明を『新世紀エヴァンゲリオン』の監督ではなく、安野モヨコの夫として知ったのである。

『監督不行届』で描かれる“カントクくん”は、天真爛漫な変人、でも繊細、みたいな人で、すごく良い感じなのだが、巻末の「庵野監督カントクくんを語る」インタビューもまた良い感じなのだった。惚気とは違う、ひとりの女性に対する尊敬と愛情がストレートに伝わってくるインタビューで、当時大学生だった私は心底「こういう人と結婚したい……!」と思った。今でもそう思う。

その後、ニコニコ動画の一挙放送で『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビシリーズ全26話を視聴し、ようやく「安野モヨコの夫」は「庵野秀明」になったのである。


おめでとう

おたくを除いた一般的な雰囲気としては、エヴァは観ていなくても『シン・ゴジラ』は観た、という人が多い印象だ。話題になっていたし、おそらく金曜ロードショーでも放映されたからだろう。私はエヴァのテレビシリーズは観たけれど、新劇場版や『シン・ゴジラ』は観ていない。ちなみに『シン・ウルトラマン』はちょっと観たい。Twitterか何かで「しっかりSFしてる」みたいな評を見かけたからだ。


超嬉しそう……


展覧会の始まりは「実家の足踏みミシン」。アニメの原画はもちろん、学生時代のスケッチブックや、レイアウト用紙に描かれた落書きもおもしろい。でも、やっぱり、いちばんは動画だ。庵野秀明は巨大構造物を極めて美しく壊す。私はおたく文化に疎いし、一般的感覚も希薄で話題作すら見落としてしまうけれど、庵野秀明が非常に美しくモノを壊すことはよく分かった。だから、宮崎駿巨神兵が壊れる瞬間を庵野秀明に任せたのだろう。


何か大きなものが壊れる瞬間に魅入られる気持ちって、みんなにもあるのだろうか?たとえばラピュタが崩壊していくシーンとか、かっこいいと思う。破壊行為には人間の愚かさや醜さが必ず含まれているのに、どうしてだろう。そんなの全然好きじゃないのに。囚われて、動けなくなってしまう。



とにかく何かを浴びるように享受するのが、おたくへの第一歩なのだろう。庵野秀明が敬愛する漫画、アニメ、特撮作品が映し出された巨大LEDスクリーンを眺めながらそう思う。私だったらなんだろう?私が人より過剰なところって、自意識くらいしか思いつかないよ。その次が読書、なんだろうけど、平均よりは読む程度で、過剰だとは言い難いし……。

おたくへの道は長く険しい。


おまけ

ポストカードは庵野秀明展のもの。古代文字ガーゼハンカチとモディリアーニの指人形ストラップは、ただ可愛いから買ってしまった。


帰りにコーヒーボーイへ寄ってコーヒー豆をもらい、ついでに一杯飲んでから帰る。人に淹れてもらうコーヒーって、なんでこんなに美味しいんだろう。