部屋と沈黙

本と生活の記録

詠み人知らず

久しぶりにゆっくりと朝を過ごす。土曜日。休日の午前中が好きだ。

このあいだのような地獄の忙しさは去ったものの、細かい業務が途切れることなくまわってくるため、12月も基本的には早朝出勤を続けていた。ただ、冷え込みが増すにつれて、朝起きるのがつらくなっていく。

私はおそらく人よりもよく眠るほうだ。学生のころは、休日になると昼近くまで眠るせいで母には怒られ、先に起きているきょうだいには「おそよう」と言われた。今となっては、遅くとも8時台には目が覚めるけれど、寝ようと思えばいくらでも寝られる。

できれば8時間は眠りたい。昼寝もしたい。でも、平日に8時間の眠りを確保するのは難しく、概ね6時間半から7時間睡眠になってしまう。冬の平日早朝は眠い上に寒いので、ますます起きられず、コーヒーをいれる時間を削って眠り、朝ごはんを食べる時間を削って眠ってしまう。

職場のデスクで朝食代わりのビスケットをかじりながら、ナポレオンのことを考える。ナポレオン・ボナパルトの睡眠時間は4時間だった。小学生のときに読んだ図鑑か、高校の倫理の資料集かに、そう書いてあった。いいなー、ナポレオン。私がナポレオン並みのショートスリーパーだったら、1日4時間分の自由時間が増えるのに。1日につき映画2本分の自由。

とはいえ寝そうだけどな、私。1日4時間の自由時間ができたら、寝そう。それくらい、私にとって、眠りはごちそうなのだった。

午後は美容院へ。髪を切りに行くたび、Twitterのアイコンのことを思い出してしまう。開設当初からショートカットのchappie(チャッピー)を設定しているんだけど、実際の私は同じころから髪を伸ばし始め、今ではもう鎖骨にかかるくらいの長さになっている。

一度、現状の髪の長さと合わせるべく、チャッピーの髪型を変えてみたものの、どうにもしっくりこず、やめてしまった。そもそも私がチャッピーを選んだのは、パーツの組み合わせ次第で誰にでもなれるようでいて、その実、誰にもなれないからだった。同じ顔。同じ表情。その誰でもない感じが好きだった。

あなたが若くて可愛い女の子であれば、セックスをモチーフに詩を書けばいい。
ある雑誌で、そういう詩と女の子が賞を受けているのを見て、いいんだけど、またかと思った。与謝野晶子の系譜なのか、そういう詩と女の子が賞とセットになっているのを、よく見かける。もし、この詩を書いたのがごりごりのおじさんだったとしたら、果たして賞を受けることができたのだろうか。
いずれにせよ「何を言うか」より「誰が言うか」であり、「誰が」を曖昧にしてブログを書いているこの私も、もしかしたら、ごりごりのおじさんかもしれないよ。
ブログの没メモより引用

「何を言うか」より「誰が言うか」を大事にする世の中がつまらなかった。「誰が」の支えがなくとも立たせることができる“ほんとう”の言葉を見つけたい。“詠み人知らず”でも立つ言葉。誰でもない私が探すには、もってこいでしょ。髪の長さなんて瑣末なことである。というわけで、新しいアイコンを作ってみた。

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くま好きだし。……なんかこの、まの抜けた感じが私にそっくりな気がする。変えるかもしれないし、変えないかもしれない。