部屋と沈黙

本と生活の記録

“可愛い”の領土 / サンリオ展へ行ってきた

会期最終日のすべり込みで、サンリオ展へ行ってきた。


KDDI維新ホール

「ものごころつく前から本が好きだった」と言えるのに、好きだったキャラクターに関してはぴんとこない。幼いころに母からもらったねこのぬいぐるみが特別だったから、キャラクターものにはほとんど興味がなかった。

それでも、小学生のころの遠足用リュックサックはキキララ(リトルツインスターズ)だった。妹はキティちゃん、私はキキララ。キキララのことを好きかどうかはよく分からなかった。キティちゃんも“ねこ”だけれど、私が好きなのは私の“ねこちゃん”なので、妹のキティちゃんを羨ましく思うこともなかった。

高学年になり、自分で選んだマロンクリームのリュックサックを買ってもらった。キャラクターで選んだというよりは、ブラウンでシックな感じが大人のお姉さんみたいで素敵だったからだ。

今でこそ、ミッフィーが好きだとか、ポチャッコが可愛いだとか言っているけれど、当時の私は何が“可愛い”のかよく分かっていなかった。幼い私が知っているのは本とねこのぬいぐるみだけで、自分にとっての“可愛い”の基準は曖昧だった。

それからウン十年、私の“可愛い”の領土は、今もなお拡大の一途を辿っている。


グラフィカルな最初期のマイメロディ

マロンクリーム



リトルツインスターズ

初期のポチャッコ

私はこだわりが強いほうだという自覚がある。だから、年を重ねるごとに私にとっての“可愛い”が研ぎ澄まされて、少数精鋭になっていくのだろうと思っていた。でも違った。もうね〜、だいたい全部可愛い。




ハローキティ


いちご新聞

こだわりが強いほど狭まっていくと思われた私の“可愛い”の領土は、こだわりの総量が爆発的に増えることで今もなお拡大し続けている。つまり、こだわりが2、3個だと狭いじゃん。でも、こだわりが2、300個あれば大抵どれかに引っかかるからだいたい全部可愛い、みたいな。これは大発見だよ。今までは、こだわりが強いせいで視野が狭くなっているかもしれない、という引け目があった。それももう終わりだ。有り余るほどのこだわりがあれば、最終的に、ほぼこだわりがない状況と同等になる。やったね!こだわりが強い人たち、おめでとう。そのまま、お前のこだわりを拡張させ続けろ!

本好きとしては、やっぱり出版部門の展示が興味深い。

古書界隈においてその名を轟かせるサンリオSF文庫をはじめ、贈るための本としてイラストや装幀にこだわったギフトブックシリーズも素敵だ。


近年では、あらゆるデータが電子化され、音楽や物語ですら“情報”として取り扱われているように思える。確かに、サブスクや電子書籍は機能的で便利だし、音楽も物語も“情報”であることには違いない。でもな〜、私は“情報”を得たいわけじゃないんだよ。私が求めているのは、情報や機能の外れにある“何か”だ。

美しいものには永遠性があり、美しいものを求める心には無限の夢があるのです。
やなせたかし詩集『愛する歌』より

サンリオは、お皿の縁やハンカチに、いちごの柄をつけるところから始まったという。機能だけを求めるなら、柄なんて要らないよ。でも、つけた。きっと、そういうところに“可愛い”の領土は広がっているのだと思う。



図録とランチクロス